割増賃金
(1)割増賃金の種類
使用者は、労働者に法定労働時間を超える時間外労働、又は深夜労働(午後10時から翌日午前5時までの時間帯の労働)を行わせた場合には、通常の賃金額の2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。また、法定休日(1週間で1日、又は4週間で4日の休日)に労働させた場合には、通常の賃金額の3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払わなければなりません。
(労働基準法第37条、労働基準法施行規則第19,20,21条、労働基準法第37条第1項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令)
種類 |
支払う条件 |
割増率 |
時間外 |
1日8時間・週40時間(原則)を越えたとき |
25%以上 |
休日 |
法定休日(週1日)に勤務させたとき |
35%以上 |
深夜 |
22時から5時までの間に勤務させたとき |
25%以上 |
※ 時間外が深夜に及んだ場合には、5割以上(時間外2割5分+深夜2割5分)の、また、休日労働が深夜に及んだ場合には、6割以上(休日労働3割5分+深夜2割5分)の率で計算した割増賃金の支払いが必要となります。
(2)割増賃金の計算方法
① 割増賃金の計算の基礎
割増賃金の計算基礎に入れるべき賃金は、通常の労働時間または労働日に対して支払われる賃金であり、基本給のみならず諸手当が含まれますが、以下の賃金は労働と直接的な関係が薄く個人的事情に基づいて支給されていることなどから割増賃金の計算基礎に算入しなくてもよいことになっています。(下記の法定除外賃金は、制限的に列挙されているものですので、これらの手当に該当しない通常の労働時間又は労働日の賃金はすべて割増賃金の計算に算入しなければなりません。)
ア 家族手当(労働基準法37条2項)
イ 通勤手当(労働基準法37条2項)
ウ 別居手当(労働基準法施行規則21条1号)
エ 子女教育手当(労働基準法施行規則21条2号)
オ 住宅手当(労働基準法施行規則21条3号)
カ 臨時に支払われた賃金(労働基準法施行規則21条4号)
キ 1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(労働基準法施行規則21条5号)
※ 上記の手当が割増賃金等の計算の基礎になる賃金に含まれるかどうかは、名称ではなく内容により判断されます。
(家族手当)
家族手当は「扶養家族数又はこれを基礎とする家族手当額を基準として算出した手当」と定義されている。したがって、「(この定義に当てはまるものは)物価手当、生活手当その他名称の如何を問わず家族手当として取扱う。(例えば)臨時特別手当及び僻地手当のうち扶養家族数を基礎として算出した部分は、これを家族手当とみなし割増賃金の基礎から除くものとする。 臨時特別手当及び僻地手当の中で、独身者に対して支払われている部分及び扶養家族のあるものにして本人に対して支給されている部分は家族手当ではないから、かかる手当は割増賃金の基礎に算入する。」(S22.12.26 基発第572号)
「扶養家族ある者に対し、その家族数に関係なく一律に支給されている手当ては家族手当とはみなさない。かかる手当は割増賃金の基礎に入れるべきである。」(S22.11.5基発第231号)
(通勤手当)
通勤手当は「労働者の通勤距離又は通勤に要する実際費用に応じて算出される手当」と解される。距離や通勤の実際費用にもとづかない一律支給は、通勤手当とみなされないことがあります。
(別居手当・子女教育手当)
労働と直接的な関係が薄く個人的な事情に基づいて支給される賃金であるため、割増賃金の基礎から除外したもの。
(住宅手当)
割増賃金の基礎から除外される住宅手当とは、住宅に要する費用に応じて算定される手当をいうものであり、手当の名称の如何を問わず実質によって取り扱うこととされています。住宅に要する費用とは、賃貸住宅については、居住に必要な住宅(これに付随する設備等を含む。以下同じ。)の賃貸のために必要な費用、持家については、居住に必要な住宅の購入、管理等のために必要な費用をいいます。費用に応じた算定とは、費用に定率を乗じた額とすることや、費用を段階的に区分し費用が増えるにしたがって額を多くすることをいうものです。住宅に要する費用以外の費用に応じて算定される手当や、住宅に要する費用に関わらず一律に定額で支給される手当は、ここでいう住宅手当には該当しません。(割増賃金の計算に含めなければなりません。)
【算入しなくてよい住宅手当にあたる例】
・住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給することとされているもの。例えば、賃貸住宅居住者には家賃の一定割合、持家居住者にはローン月額の一定割合を支給することとされているもの。
・住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるにしたがって額を多くして支給することとされているもの。例えば、家賃月額5~10万円の者には2万円、家賃月額10万円を超える者には3万円を支給することとされているようなもの。
【算入しなくてよい住宅手当にはあたらない例】
・住宅の形態ごとに一律に定額で支給することとされているもの。例えば、賃貸住宅居住者には2万円、持家居住者には1万円を支給することとされているようなもの。
・住宅以外の要素に応じて定率または定額で支給することとされているもの。例えば、扶養家族がある者には2万円、扶養家族がない者には1万円を支給することとされているようなもの。
・全員に一律に定額で支給することとされているもの。
(臨時に支払われる賃金)
「臨時的、突発的事由にもとづいて支払われたもの、及び結婚手当等支給条件は予め確定されているが、支給事由の発生が未確定でありかつ非常に稀に発生するものをいうこと。名称の如何にかかわらず、右に該当しないものは臨時に支払われた賃金とはみなさないこと。」(S22.9.13基発第17号)とされる。
具体的には、私傷病手当、加療見舞金、退職金等がこれに該当する。
(1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金)
・賞与
・1箇月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
・1箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
・1箇月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給又は能率手当
毎月払いを回避する目的で、これらの名称をつけていると認められる場合は除外賃金とならない。
② 1時間あたりの賃金
週給制や月給制の場合も1時間あたりの賃金に換算してから割増賃金を計算します。ただし、上記①の割増賃金の計算基礎に算入しなくてもよい賃金は除外して計算します。
ア 時間によって定められた賃金については、その金額
イ 月によって定められた賃金については、その金額を月の所定労働時間数で割った金額
※ 月によって所定労働時間が異なるときは1年間における1月平均所定労働時間数
ウ 日によって定められた賃金については、その金額を1日の所定労働時間数で割った金額
エ 出来高払制その他の請負制によって定められた賃金については、一の賃金計算期間における当該賃金の総額を、その賃金算定期間における総労働時間数で割った金額
オ 月額賃金と日額賃金を受ける場合などはそれぞれを合計した金額
- 割増手当計算
1時間あたりの賃金 × 時間外・休日・深夜労働の時間 × 割増率
④ 端数処理
労働時間は、1分単位で計算しなければなりません。端数を切り上げることは問題ありませんが、切り捨てることはできません。ただし、以下のような端数処理は「これを、違反として取り扱わない」(昭和63.3.14基発第150号)としています。
ア 1ヶ月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未
満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
- 1日を単位に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること』
は違法となります。
イ 1時間当たりの賃金額及び割増賃金額に円未満の端数が生じた場合、50銭未満の
端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げること。
ウ 1ヶ月における時間外労働、休日労働、深夜業の各々の割増賃金の総額に1円未満
の端数が生じた場合に、イと同様に処理すること。
また、割増賃金の計算過程で1時間あたりの賃金額および割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、1ヵ月間の時間外労働、休日労働、深夜労働について、それぞれの割増賃金に1円未満の端数を生じた場合は、就業規則等で定めたうえで50銭未満の端数を切り捨て、それ以上を1円に切り上げることができます。
(3)その他注意事項
① 割増賃金の定額払い
割増賃金を定額払いとすることに問題はありません。ただし、実際の時間外労働等に対する割増賃金額を計算した結果、定額払いの金額が労働基準法上支払うべきとされる割増賃金の額を下回っている場合はその差額を別途支払う必要があります。また、割増賃金を定額で支払う場合、賃金中の何時間分が時間外労働であり、いくら分が時間外労働の割増賃金部分にあたるのかを労働契約書や就業規則等にて明確にする必要があります。これらが不明確な場合、割増賃金を支払っていると判定されないケースもありますので注意が必要です。
【裁判例】
労働基準法第37条は時間外労働等に対し一定額以上の割増賃金の支払いを使用者に命じているところ、同条所定の額以上の割増賃金の支払いがなされる限り、その趣旨は満たされ同条所定の計算方法を用いることまでは要しないので、その支払い額が法所定の計算方法による割増賃金額を上回る以上、割増賃金として一定額を支払うことも許されるが、現実の労働時間によって計算した割増賃金額が右一定額を上回っている場合には、労働者は使用者に対してその差額の支払いを請求することができる。』(関西ソニー販売事件 昭和63.10.26 大阪地裁)
② 歩合給制の割増賃金
歩合給制といえども法定労働時間を越えた場合には、時間外の割増賃金を支払わなければなりません。歩合給者の中には、賃金の一部が出来高払い、それ以外に一定の固定給が保障される方、月間の売上高に一定の歩合率を乗じて賃金が決められる、完全歩合給となる方がいます。労働基準法では、就業した以上は、出来高が少なかったとしても、労働時間に応じて一定額の賃金保障を事業主に義務づけています。これは、本人の能力にかかわりなく、賃金が左右され、また、労働者を過酷な重労働に追いやり、生活を不安定にする弊害などを考えた措置です。歩合給の中に一定の残業代を含めて支払っていても、通常の労働時間の賃金と割増賃金との区別がつかない以上、歩合給の支給により割増賃金が支払われたことにはならないということです。賃金の中の何時間分が時間外労働であり、いくら分が時間外労働の割増賃金部分に当たるかを明確にする必要があるということになります。さらに、実際の労働時間により計算した各月の割増賃金相当額が各月所定の歩合給に含む割増賃金相当額を超えていれば、超えた分を加算支給する必要があります。歩合給の場合、割増賃金を算定するに当たっての基礎賃金は、当該賃金計算期間における歩合給総額を総労働時間で割った額になります。
【裁判例】
「歩合給の額が……時間外労働及び深夜労働を行った場合においても増額されるものではなく、通常の労働時間の賃金に当たる部分と時間外及び深夜の割増賃金に当たる部分とを判別することもできないものであったことからして、この歩合給の支給によって、……労働基準法37条の規定する時間外及び深夜の割増賃金が支払われたとすることは困難というべきであり、……労働基準法37条及び労働基準法施行規則19条1項6号の規定に従って計算した額の割増賃金を支払う義務がある。」(高知県観光事件 最高裁 平成6.6.13 労判653号)
- 年俸制の割増賃金
賃金の支払形態によって割増賃金の支払いが免除される規定はありません。年俸制であっても時間外労働等に対し割増賃金の支払いが必要です。ただし、年俸に割増賃金を含むことが契約上明らかであり、割増賃金相当部分が他の部分と区別でき、かつ、法定金額以上支払われた場合は問題ありません。
- 週休2日制の法定休日
労働基準法に定められている休日の規定は週1回(または4週4休)であり、これを法定休日と呼びます。週休2日制であってもそのうちの1日については法定休日ではないので、その日出勤した場合、休日割増の対象にはなりません。ただし、週40時間を超える場合には時間外割増が必要です。週休2日制を採用している場合などの割増賃金の計算は、以下のとおりです。
ア 全所定休日に一律に3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払う
イ 所定休日のうち、週1回(又は4週4日)の休日について3割5分以上の割増賃金を支払い、その他の休日は2割5分以上(時間外労働)の割増賃金を支払う。
※ イの場合は、法定休日を特定する必要があるので、就業規則等に「毎週日曜日は法定休日」「連続する2日の週休のうち後の1日を法定休日とする」定める必要があります。
【通達】
休日のうち、最後の1回又は4日について3割5分以上の率で計算した割増賃金を支払うことを、就業規則その他これに準じるもので定めることは上記休日を明確にしているものである。(H6.1.4 基発第1号)
3割5分以上の率で計算して支払われた日数と確保された日数の合計日数が、週1回(又は4週4日)以上である場合には法第37条第1項違反として取り扱わない。(H6.1.4 基発第1号)
- 振替と代休
法定休日を他の勤務日とあらかじめ交換して勤務させた場合は、休日の振替となり、割増賃金を支払う必要はありません。休日の振替を行う場合には以下の要件を満たす必要があります
ア 就業規則等に振替休日を規定しておく
イ 振替日を事前に定め、前日までに労働者に告知する
ウ 振替日は4週4休を確保して与える
また、休日に労働した後、その代償してその後の特定の労働日に労働義務を免除するいわゆる代休の場合には、休日の振替にはあたりませんので、法定休日労働について割増賃金を支払わなければなりません。
なお、同一週内での休日振替では問題にはなりませんが、他の週に休日振替を行うと振替え先の週で法定労働時間をこえる場合があります。この場合は、時間外労働になりますので注意が必要です。
【通達】
休日に労働した後、その代償してその後の特定の労働日に労働義務を免除するいわゆる代休の場合は休日の振替に当たらない(S63・3・14基発第150号)。
「休日振替の結果、就業規則で1日8時間又は1週40時間を超える所定労働時間が設定されていない日又は週に、1日8時間又は1週40時間を超えて労働させることになる場合には、その超える時間は時間外労働となる。」(S63・3・14基発第150号)
完全週休2日制のもとで、ある週の休日を他の週に振替える場合、「例えば、1日の休日を他の週に振替えた場合には、当該週2日の休日があった週に、8時間×6日=48時間労働させることになり、あらかじめ特定されていない週に週48時間を超えて労働させることになるので、8時間分は時間外労働となる。」(S63・3・14基発第150号)
- 1ヵ月単位の変形労働時間制の時間外割増賃金
1ヵ月単位変形労働時間制は、1カ月以内の期間について所定労働時間を1週平均40時間以内に設定すれば、特定の日に8時間、あるいは特定の週に40時間を超えて労働させても、割増賃金の支払が不要な制度です。ただし、勤務表は、あらかじめ変形労働期間が開始する前に決定・通知しなければいけませんので、後から勤務表を崩し、特定していない日・週に法定労働時間を超えた場合には、割増賃金が必要になります。変形期間を最長の1ヵ月とした場合、法定労働時間の総枠は以下のとおりです。
・31日の月177.14時間
・30日の月171.42時間
・28日の月160時間
※ 月の暦日数×40時間÷7日
よって、1ヵ月単位の変形労働時間制の時間外労働となる時間は以下のとおりです。
・1日8時間を超え、かつ就業規則で定めた時間を超えた時間
・1日8時間を超えていないが、1週40時間を超え、かつ就業規則で定めた時間を超え
た時間
・1日8時間、1週40時間を超えていないが、法定労働時間の総枠を超えた時間
⑦ 管理職と割増賃金
労働基準法第41条第2号の管理監督者、機密事務取扱者については、労働時間の規制が除外されていますので、深夜業の場合を除き割増賃金の問題は生じません。しかし、ここでいう管理監督者とは「労働条件その他の労務管理について経営者と一体の立場にある者」とされており「部長」「営業所長」といった肩書きではなく、実態により判断します。例えば、「地位に応じた相応の賃金が支払われている」といった待遇とともに「部下の採用、給与の決定などの人事管理の権限を持つ」「出退勤時間が本人の裁量に任されている」といった立場にあることが必要です。営業上の理由から全員に課長という肩書きが与えられている部署があったとしても、その従業員がこれらの立場になければ管理監督者とはいません。
【通達】
「 企業が人事管理上あるいは営業政策上の必要等から任命する職制上の役付者であればすべてが管理監督者として例外的取扱いが認められるものではないこと 」
「職制上の役付者のうち、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない、重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないような立場にある者に限って管理監督者として法第41条による適用の除外が認められる趣旨であること」
「管理監督者の範囲を決めるに当たっては、かかる資格及び職位の名称にとらわれることなく、職務内容、責任と権限、勤務態様に着目する必要があること」
「定期給与である基本給、役付手当等において、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か、ボーナス等の一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等について留意する必要があること。なお、一般労働者に比べ優遇措置が講じられているからといって、実態のない役付者が管理監督者に含まれるものではないこと」
「スタッフ職が、本社の企画、調査等の部門に多く配置されており、これらスタッフの企業内における処遇の程度によっては、管理監督者と同様に取扱い、法の規制外においても、これらの者の地位からして特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられ、かつ、法が監督者のほかに、管理者も含めていることに着目して、一定の範囲の者のについては、同法第41条第2号該当者に含めて取扱うことが妥当であると考えられること」
(昭22.9.13 発基17号、昭63.3.14 基発150号)
【裁判例】
「労基法41条にいう管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者の意味であるところ、管理監督者であるといい得るためには、就業時間や職務の遂行について相当程度の自由な裁量があること、部下の人事や経営の重要な事項を知り、それについてある程度の決定権があることなどが必要であるというべきである。」(東京地裁判決 H18.8.7)
「管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者と定義されるところ、一般的にはライン管理職を想定しているが、他方、企業における指揮命令(決定権限)のライン上にはないスタッフ職をも包含するものとされる。・・・会社に雇用される労働者のうちで、・・・時間外勤務に関する法制の適用が除外される理由としては、当該仕事の内容が通常の就業時間に拘束される時間管理に馴染まない性質のものであること、会社の人事や機密事項に関与接するなどまさに名実ともに経営者と一体となって会社の経営を左右する仕事に携わるものであることが必要とされる。そして、このような労働時間の制限及び時間管理を受けないことの反面ないし見返りとして、会社における待遇面で勤務面の自由、給与面でのその地位にふさわしい手当支給等が保障されている必要があるものというべきである。」(東京地裁判決 H18.11.10)
「「監督若しくは管理の地位にある者」とは経営方針の決定に参画し、あるいは労務管理上の指揮権限を有する等経営者と一体的な立場にあり、出退勤について厳格な規制を受けず、自己の勤務時間について自由裁量権を有する者をいうと解するのが相当」(東京地裁判決 H18.12.8)
「管理監督者に当たるといえるためには、店長の名称だけでなく、実質的に・・・法の趣旨を充足するような立場にあると認められるものでなければならず、具体的には、①職務内容、権限及び責任に照らし、労務管理を含め、企業全体の事業経営に関する重要事項にどのように関与しているか、②その勤務態様が労働時間等に対する規制になじまないものである否か、③給与(基本給、役付手当等)及び一時金において、管理監督者にふさわしい待遇がされているか否かなどの諸点から判断するべきであるといえる。(東京地裁判決 H20.1.28)
⑧ 1ヶ月の平均所定労働時間数
1日の所定労働時間は所定の出勤から退勤までの時間から休憩時間を引いて求めます。季節や曜日により1日の所定労働時間が変わる場合には1年間で通算した所定労働時間を12月で割って求めます。
(365-年間所定休日日数)÷12)×1日の所定労働時間数
例 1日7時間制で年間の合計休日が120日の会社
(365-120)/12)×7=142.91667・・・・・
なお、端数は切り捨て処理を要する。この場合、142時間又は142.9時間とします。
【通達】
「通常の労働日とは、所定の実労働日をいうものである」(昭26.8.6基収第2859号)
⑨ 所定労働時間が法定労働時間より短い場合
1日7時間、週35時間の所定労働時間を採用している会社の場合、所定労働時間を超え法定労働時間(8時間)までの1時間の取扱いについては、法定労働時間までの1時間について通常の賃金を、法定労働時間を超える部分について2割5分以上の割増賃金を支払えば問題ありません。ただし、賃金計算が非常に複雑になります。
【通達】
「法定労働時間を超えない限り、本条に定める割増賃金を支払わなくてもよいが、その時間については原則として通常の労働時間の賃金を支払わなければならない。ただし、労働協約、就業規則等によって、その1時間に対し別に定められた賃金がある場合にはその別に定められた賃金額で差し支えない。」(昭23・11・4基発第1592号)
⑩ 日常業務以外で時間外労働とみなされるケース
・使用者が黙認している残業時間
【通達】
「使用者の具体的に指示した仕事が、客観的にみて正規の勤務時間内ではなされ得ないと認められる場合の如く、超過勤務の黙示の指示によって法定労働時間を超えて勤務した場合には、時間外労働となる。」(S22.12.26基収第2983号)
・時間外に行う安全衛生教育や企業内教育、忘年会、歓送迎会等
法令で義務付けられている安全衛生教育等は当然労働時間になります。また、自主参加で、不参加による不利益な取扱いはない、雰囲気的なものもあって自主的に参加するような場合などは、基本的には労働時間ではありません。自主参加が建前であるが、実際問題として事実上の半強制等の場合は状況により判断が分かれます。
形式上の自主参加性を否定すべき要素には以下のようなものがあります。
ア 指示・伝達など、業務の遂行に欠かせない内容を含む場合。
イ 指示・伝達ではないが、業務の遂行に直接必要な内容を含む場合(参加しないことに
より本人の業務に具体的に支障が生ずるか否か。)
ウ 組織維持上、不可欠にして、全員参加自体に意味があると認められるもの
エ その他、業務上の必要にもとづき開催される教育
【通達】
「労働安全衛生法第59条、60条の安全衛生教育は、事業者の責任において実施されなければならないものであり、所定労働時間内に行うのを原則とする。法定時間外に行われた場合には、当然割増賃金が支払われなければならないものであること。」(S47・9・1基発第602号)
「参加することについて、就業規則等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にならない。」(S26・1・20基収第2875号)
・時間外に行う従業員の健康診断
(一般健康診断)
【通達】
「一般健康診断は一般的な健康の確保をはかることを目的として事業者にその実施義務を課したものであり、業務遂行との関連において行われるものではないので、(受診時間は)当然に事業者の負担すべきものではなく、労使協議して定めるべきものであるが、労働者の健康確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、その受診に要した時間の賃金を事業者が支払うことが望ましいこと。」(S47・9・18基発第602 号)
(特殊健康診断)
【通達】
「特殊健康診断は、事業の遂行にからんで当然実施しなければならない性格のものであり、それは所定労働時間内に行われるのを原則とすること。また、実施に要する時間は労働時間と解されるので、時間外に行われた場合には、当然割増賃金を支払わなければならないものであること。」(S47・9・18基発第602号)
・職場会議
職場会議、打ち合せ会議等は、業務の運営上の必要から実施されるものであるから、所定労働時間内に行われるべきです。もし、それが勤務時間外に実施されることとなる場合は、当然、時間外労働にあたり、割増賃金の支払い対象になります。
・休憩時間中の窓口事務や電話当番
これらの時間は労働時間になりますので、もし勤務時間外に実施されることとなる場合は、当然、時間外労働にあたり、割増賃金の支払い対象になります。更に、この場合休憩時間を別途与えなければ労働基準法第34条にも違反します。
【通達】
「休憩時間中に窓口事務、来客当番等に従事させた場合には、その時間は労働時間となるから、その時間と他の労働時間を通算し、1日8時間又は週の法定労働時間を超える場合には、割増賃金の支払義務が生ずる。」(昭23・4・7基収第1196号)

