健康診断
(1)健康診断の種類
労働者安全衛生法第66条では,健康診断を以下の5種類に分け,その対象の拡大,検査項目の追加等,内容の充実を図るとともに,これら健康診断の結果に基づく措置等について定めています。労働者は事業主の行う健康診断を受けなければなりませんが,事業主の指定した医師又歯科医師が行う健康診断を受けることを希望しない場合は,他の医師,歯科医師の行う健康診断をうけ,その健康診断の項目ごとに結果を記載した書面を事業主に提出しなければなりません。
① 一般の項目についての健康診断
② 有害業務に従事する労働者に対する特別の項目についての健康診断
③ 一定の有害業務に従事した後,配置転換した労働者に対する特別の項目についての健康診断
④ 有害業務に従事する労働者に対する歯科医師による健康診断
⑤ 都道府県労働局長が指示する臨時の健康診断
(2)一般の項目についての健康診断
一般の項目についての健康診断とは以下のとおりです。
① 雇入れ時の健康診断(安衛則第43条)
- 定期健康診断(安衛則第44条)
- 特定業務従事者の健康診断(安衛則第45条)
- 海外派遣労働者に対する健康診断(安衛則第45条の2)
- 結核健康診断(安衛則第46条)
- 給食従業員の検便(安衛則第47条)
(3)一般の項目についての健康診断以外の健康診断
① 有害業務に従事する労働者に対する特別の項目についての健康診断
政令で定める有害な業務として次に掲げる業務を指定しています。 これらの業務に従事する労働者として雇い入れる際又は当該業務へ配置換えする際及び所定の期間ごとに定期に健康診断を行わなければいけません。この特別の健康診断において実施すべき項目等についてはそれぞれ各規則において定められています。
(ア) 高圧室内業務及び潜水業務 (高気圧作業健康診断・高圧則第38条)
(イ) 放射線業務 (電離放射線健康診断・電離則第56条)
(ウ) 一定の特定化学物質を製造しもしくは,取り扱う業務又は,製造等禁止物質を試験研究のため製造し,もしくは使用する業務 (特定科学物質等健康診断・特化則第39条)
(エ) 鉛業務 (鉛健康診断・鉛則第53条)
(オ) 四アルキル鉛等業務 (四アルキル鉛健康診断・四アルキル鉛則第22条)
(カ) 有機溶剤業務 (有機溶剤健康診断・有機則第29条)
② 有害業務の従事後、配置換えした労働者に対する特別の項目についての健康診断
有害業務のなかには,その業務に従事することにより生じる健康障害の発生までの潜伏期間が長いものがあります。そのため,他の業務に配置転換された後も,当該有害業務に係る特別の項目についての健康診断をおこない健康障害の早期発見等,適切な健康管理を進める必要があります。安衛令第22条2項で定められた物質を製造し又は取扱う業務を行う労働者はこの対象となります。
- 特定の業務に従事する労働者に対する歯科医師による健康診断
有害な業務のうち安衛令第22条第3項に規定する塩酸,硝酸など,歯又はその支持組織に有害な物のガス,蒸気又は粉じんを発散する場所における労働者に対し,雇入れの際,当該業務への配置換えの際及び当該業務についた後6月以内ごとに1回,定期に,歯科医師による健康診断を行わなければならない。
- 都道府県労働局長が指示する臨時の健康診断
都道府県労働局長は特定の職業性疾病が多発したときなど労働者の健康を保持する必要があると認められる時は,直ちに特別の項目の健康診断を実施したり,その職業性疾病を予防するための適切な措置をとる必要があるときは,特別の項目を追加して健康診断を実施するなど必要な事項を指示することができます。
(4)雇入れ時の健康診断
常時使用する労働者を雇入れた際(雇入れの直前又は直後)は、以下の項目の健康診断を行わなければなりません。なお、健康診断項目の省略はできません(適正配置及び入職後の健康管理の基礎となるため)。ただし、医師による健康診断を受けてから3ヵ月以内の者が、その結果を証明する書類を提出した場合には、その項目は省略できます。
① 既往歴および業務歴の調査
② 自覚症状および他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力、および聴力の検査
④ 胸部エックス線検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
⑦ 貧血検査(赤血球数、血色素量)
⑧ 肝機能検査(GOT,GPT、γ一GTP)
⑨ 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライト)
⑩ 血糖検査
- 心電図検査
- 色覚検査は平成13年10月1日から廃止されました。
※ 聴力検査は、1,000Hz及び4,000Hzの30dBで純音を用いて、オージオメーターで検査します。
※ 心電図検査は、安静時標準12誘導心電図を記録します。
※ 血糖検査については、一般的な血中グルコースの量の検査によるほか、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の検査によることも差し支えありません。
(5)定期健康診断
雇入時の健康診断の結果を基礎として,労働者の健康状態の推移を把握し,潜在する疾病を早期に発見する目的として行うものです。1年以内毎に1回、以下の項目について定期的に行わなければなりません。
① 既往歴および業務歴の調査(喫煙歴及び服薬歴含む)
② 自覚症状および他覚症状の有無の検査
③ 身長、体重、腹囲、視力、および聴力の検査
④ 胸部エックス線検査
⑤ 血圧の測定
⑥ 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)
⑦ 貧血検査(赤血球数、血色素量)
⑧ 肝機能検査(GOT,GPT、γ一GTP)
⑨ 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライト)
⑩ 血糖検査
- 心電図検査
- 喀痰検査
- 色覚検査は平成13年10月1日から廃止されました。
※ 聴力検査は、1,000Hz及び4,000Hzの30dBで純音を用いて、オージオメーターで検査します。
※ 心電図検査は、安静時標準12誘導心電図を記録します。
※ 血糖検査については、一般的な血中グルコースの量の検査によるほか、ヘモグロビンA1c(HbA1c)の検査によることも差し支えありません。
※ 喀痰検査は胸部エックス線検査により病変および結核発病のおそれがないと診断された者について医師の判断に基づき省略できます。
※ 20歳以上の者の身長測定は医師の判断に基づき省略できます。
※ 40歳未満(35歳を除く)の者の腹囲測定、貧血検査(赤血球数、血色素量) 、肝機能検査(GOT,GPT、γ一GTP)、血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライト)、血糖検査および心電図検査は医師の判断に基づき省略できます。
※ 腹囲測定については、上記に加え妊娠中の女性その他の者であって、その腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された者、BMIが20未満である者、BMIが22未満であって、自ら腹囲を測定しその値を申告した者は医師の判断に基づき省略できます。
(6)特定業務従事者の健康診断
労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務(深夜業労働者等)に常時従事する労働者に対しては,当該業務への配置換えの際および6か月以内毎に1回定期的に定期健康診断と同じ内容の項目について行わなければなりません。ただし,胸部エックス線検査及び喀痰検査については年1回で足ります。また,定期の健康診断に関しては,以下①~③の場合で医師が必要でないと認めるときには当該項目について省略でき,④は医師が適当と認める聴力の検査をもって代えることができます。
- 身長の検査
20歳以上の者
- 喀痰検査
胸部エックス線検査によって病変の発見されない又は、同検査により結核発病の恐れがないと診断された場合
- 貧血検査,肝機能検査,血中脂質検査,心電図検査
40歳未満の者(35歳の者を除く)
- 聴力の検査
45歳未満の者(35歳及び40歳の者を除く),又は,前回の健康診断で受診した者
【労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務】
・多量の高熱物体を取り扱う業務および著しく暑熱な場所における業務
・多量の低温物体を取り扱う業務および著しく寒冷な場所における業務
・ラジウム放射線、X線その他の有害放射線にさらされる業務
・土石、獣毛等の塵埃または粉末を著しく飛散する場所における業務
・異常気圧下における業務
・削岩機、鋲打機等の使用によって、身体に著しい振動を与える業務
・重量物の取り扱い等重激な業務
・ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
・坑内における業務
・深夜業を含む業務
・水銀、ヒ素、黄リン、フッ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、苛性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
・鉛、水銀、クロム、ヒ素、黄リン、フッ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気または粉塵を発散する場所における業務(エチレンオキシドを含む)
・病原体によって汚染のおそれが著しい業務
・その他厚生労働大臣が定める業務
(7)海外派遣労働者に対する健康診断
労働者を6か月以上海外派遣しようとするときおよび6か月以上派遣されていた労働者を本邦の地域内で業務に就かせようとするときに以下の項目について健康診断を行わなければなりません。
① 定期健康診断の項目
② 厚生労働大臣が定める次の項目のうち医師が必要と認めるもの
・腹部画像検査(胃部エックス線検査,腹部超音波検査)
・血液中の尿酸の量の検査
・B型肝炎ウィルス抗体検査
・ABO式及びRh式の血液型検査(派遣前に限る)
・糞便塗抹検査(帰国後に限る)
(8)結核健康診断
雇入時,特定業務従事者,定期及び海外派遣労働者に対する健康診断の結果,結核の発病のおそれがあると診断された労働者に対し,その後おおむね6月後に以下の検査を行わなければなりません。ただし、医師が認めるときは②について省略できます。
① エックス線直接撮影による検査および喀痰検査
② 聴診,打診その他必要な検査
(9)給食従業員の検便
雇入時、 当該業務への配置換えの際に検便による健康診断を行わなければなりません。
(10)自発的健康診断の結果の提出
深夜業に従事する労働者の健康管理を図るため,自己の健康に不安を有する深夜業従事者であって,事業主の実施する次の特定業務健康診断の実施を待てない者が自らの判断で受信した健康診断の結果を事業主に提出した場合,事業主は特定業務健康診断の場合と同様の事後措置等を講じることが義務付けられます。
※ 深夜業とは、22時から翌5時までの労働になります。
※ 深夜業従事者とは、常時使用され、6か月を平均して1か月当たり4回以上(6か月に24回以上)の深夜業に従事した労働者のことです。
(11)健康診断を受けて事業主が行うこと
① 健康診断の結果を労働者本人に通知するとともに、健康診断個人票に記録し5年間保存しなければなりません。
② 常時50人以上の事業場は、定期健康診断の結果を事業場の管轄労働基準監督署長へ報告しなければなりません。
③ 事業主は健康診断有所見者について当該労働者の健康を保持するために必要な措置について医師又は歯科医師の意見を聴かなければなりません。
④ 医師又は歯科医師の意見により,その必要があると認めるときには当該労働者の実情を考慮し,就業場所の変更,作業環境測定の実施等,適切な措置を講じなければなりません。

